学習処方箋の見本
中1男子・英語と数学・2か月
学習処方箋は、「いつまでに、何を、どの順番で、どんな環境でやるか」を、お子さん一人ひとりに合わせて書いた書面です。実際にお渡しするものと同じ形で、見本を1通公開します。

| 対象 | 中学1年生・男子 |
|---|---|
| 科目 | 数学・英語(2科目) |
| 期間 | 2か月 |
| 今回のねらい | 勉強を嫌いにならずに、「決まった場所で、決まったやり方で勉強する」習慣をつけること。数学は小学校の算数の復習から、英語は英検5級の単語から、同じ環境で始めます |
1. 問診票から読み取ったこと
問診票には、次のように書かれていました。
- 算数は小学4年生ごろから分からなくなってきた。とくに文章問題が苦手
- 英検5級は小学生のときに合格した。中学に入ってから暗記が苦手で、もう一度5級の内容からやり直している
- 成績はクラスで下のほう。英語と数学を何とかしたい
- 難しい問題集は手が止まってしまう
所見
まず大切なことを一つ。小学生で英検5級に合格しているのですから、英語の力がないのではありません。中学に入って「暗記して、テストで出す」というやり方に変わったとき、その方法がこの子の脳に合わなかった、ということです。
数学も同じです。小4は「文章を読んで、式に直す」作業が初めて本格的に始まる学年で、ここでつまずく子はとても多いです。計算ができないのではなく、文章から式を作る練習が足りないまま、学年だけが進んだ状態です。つまり、戻る場所がはっきりしています。戻る場所がはっきりしているのは、良い知らせです。
「難しい問題集ができない」のは当然で、この2か月は難しい問題集を一切使いません。できる問題を解いて、「できた」を積むことが、この2か月の中身です。
2. 2か月の進め方
最初の数週間で、小学4年生の算数の文章題の復習が終わります。やさしいものから順に解くだけなので、思っているより早く終わります。算数の復習が終わって「このやり方なら座れる」と体が覚えたら、英語も同じ場所・同じ環境で始めます。英語は英検5級の単語と、学校の教科書の音読からです。
| はじめの数週間 | 数学:小4の算数の文章題(基礎レベル)を、やさしい順に。式を立てるところまでで止めてよい日があってもかまいません |
|---|---|
| 算数の復習が終わったら | 数学:中1の計算(正負の数・文字式)を、学校のワークの基本問題だけ。英語:英検5級の単語を1回10語、見て・聞いて・声に出す。教科書の本文を1段落、音読 |
| 2か月が経つころ | 同じ場所・同じ手順で、数学と英語を続けている状態。間違えた問題だけを集めて、2回目を解く |
今回の処方箋では、「どこまで仕上げるか」をあえて書きません。思いどおりに進まなかったときに、勉強そのものが嫌になるのを防ぐためです。プレッシャーを与えたくありません。順番さえ守れば、速さは気にしなくて大丈夫です。
3. 毎日のやり方 ── まずは週2回から
毎日ではなく、まずは週2回から始めます。お母さん、またはご兄弟と一緒に勉強する日を週に2日決めてください。嫌いにならないことが最優先です。慣れてきて、本人が「今日もやる」と言う日が増えてきたら、回数は自然に増えていきます。
- 場所はダイニングテーブル。自分の部屋ではなく、人の気配がある場所で。誰かが同じ部屋にいる「ボディダブリング」の形にします。お母さんやご兄弟は、隣で自分の用事(家計簿・読書・自分の宿題でも可)をしながら座ってください。教える必要はありません。いるだけで効きます
- 音楽をかける。歌詞のないインストゥルメンタルを小さめの音で。無音より、静かな音があるほうが集中が続くタイプが多いです。曲は本人が選んでよいです
- お茶とおやつを先に用意する。温かいお茶を一杯と、小さなおやつ。「勉強の時間=おいしい時間」にします。おやつは大切です。ごほうびではなく、勉強の一部として置きます
- 良い匂いを用意する。本人が好きな香りの芳香剤やアロマを、勉強のときだけ使います。この匂いがしたら勉強、という合図になります
- 50分やって、10分休む。キッチンタイマーで測ります。50分が長い日は、30分+10分休憩でも構いません。1時間で終わりにします。休憩は席を立って、体を動かします
- 終わりに「今日できたこと」を1行。ノートの端に、解けた問題の数や覚えた単語を1行だけ書きます。できなかったことは書きません
4. 使う教材
- 数学:小学4年生向けの「文章題」の薄いドリル(基礎レベル・1冊)。中1は学校の教科書と、学校配布のワークの基本問題のみ
- 英語:英検5級の単語集(一番やさしいもの)。学校の教科書
- 難しい問題集・応用問題集は、この2か月は机の上に置かないでください。見えると気持ちが下がります
5. 勧めない学習法(この子の場合)
× この2か月はやらない
- 単語を10回ずつ書いて覚える
- 自分の部屋で一人で長時間
- 応用問題・難しい問題集
- 1か月分の計画表を貼る
- 「ここまで終わらせなさい」と区切りを決める
- できなかった問題を叱る・やり直させる
◎ 代わりにやる
- 単語は見て・聞いて・声に出す。書くのは1回
- ダイニングで、人の気配の中で
- 基礎問題だけ。「できた」を積む
- 「今日やる3つ」だけを紙に書く
- 終わった時間が来たら、途中でもやめてよい
- できた問題の数を記録する
6. お母さん・お父さん・ご兄弟へ
隣に座るとき、教えなくて大丈夫です。間違いを見つけても、その場で指摘しなくて大丈夫です。間違えた問題は「2回目」としてもう一度出てきますので、そこで直ります。お願いしたいのは、お茶とおやつと、良い匂いと、音楽の準備です。環境を整えるのが、ご家族の役目です。勉強の中身は、この書面がリードします。
「今日は気が乗らない」という日は、お茶を飲んでおやつを食べて、10分だけ座って終わりにしてください。それでも「座った」ことにはなります。
7. 食事のこと
勉強の環境と同じくらい、朝ごはんが効きます。難しいことはしなくて大丈夫です。この2か月は、次の3つだけ気にしてください。
- 朝は、緑の葉もの+たんぱく質。ほうれん草と卵、小松菜と納豆、ブロッコリーとチーズ。どれでもよく、毎朝同じでかまいません。鉄とたんぱく質が、午前中の集中の土台になります
- 魚を週に2〜3回。サバ・イワシ・鮭。缶詰で十分です。味噌汁に鮭、おにぎりにツナでも大丈夫です
- 朝の甘い飲み物をやめて、水・お茶・牛乳に。ジュースや甘いカフェオレで始まった午前中は、集中が途中で切れやすくなります
勉強中のおやつは、クッキーでもかまいませんが、ナッツ・バナナ・ブルーベリー・チーズ・小さなおにぎりにすると、1時間の終わりまで集中が持ちやすくなります。甘いものを禁止する必要はありません。「勉強の時間はおいしい」が、いちばん大事です。詳しくは 食べ物でできること のページにまとめてあります。
8. 2か月後に
2か月が経ったころには、ずいぶんと学習の習慣がついていると思います。成績表の点数は、その次の段階で上がってきます。勉強が苦ではなく、楽しくできるようになったら、次の段階(小5の文章題と中1の方程式、英語は英検4級の単語)に進みたいと思います。
頑張ってください。
ヒロ先生
お子さんの学習処方箋は、問診票(無料)から始まります。3分ほどで書けます。
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